Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

介護

「在宅ひとり死」に必要なこと

Yahooに、上野千鶴子さんの「在宅ひとり死」についての 記事がありました。news.yahoo.co.jpよく、おひとり様が在宅死を迎えることが出来るか、と いうことが話題になります。結論を言えば可能ですが いくつか条件があります。まず、ご本人の強い決意と 意思…

介護崩壊の足音

新型コロナウイルス蔓延に伴い、本来必要な医療を提供 出来なくなる『医療崩壊』が懸念されていますが、介護 も結構厳しい状況になっています。www3.nhk.or.jp昨晩のNHKのWEB NEWSの記事ですが、緊急事態宣言の 出ている7都道府県で、なんと234の介護事業所…

施設系訪問診療の難しさ

昨日、「施設系訪問診療のピットフォール」という勉強会 に参加させて頂きました。その中でとても共感したことは、 施設の「担当者」、これは主に看護師さんですが時に 施設長さん等も含みますが、要するに「本人」と「家族」 以外の担当者が介在する難しさ…

24時間体制、個人的な考察

最近、とある訪問看護ステーションが24時間対応の体制を やめたとお聞きしました。長くお付き合いをさせて頂いて いるステーションで、今後も良い関係を続けられたらと 思っていたので残念に思いました。もちろん、考え方の問題であり良い悪いではありません…

介護サービス導入の不安や抵抗感について

癌で療養中の患者さんが訪問診療を希望する段階、つまり 病院に通うことが難しい時、その患者さんに残された時間 は2~3か月以内ということが多いです。そしてこの2~3 か月は、これまでの数年に比べてずっと症状の変化が大きい です。私達は多くの患者さん…

幸せの最大公約数

この「幸せの最大公倍数」という言葉、本日お話する 内容からは大袈裟かもしれませんが、Twitterで褒め られたので、気を良くして記事のタイトルにして みました(笑)。私は訪問診療を始める前からひとつ、 常に意識していることがあります。それは、誰かの…

『今日から第二の患者さん』

最近登録したnoteを見ていて青鹿さんの記事が目にとまり ました。note.muこれ、なんですが。私は医師になってこの方、ずっと疑問視、 問題視していたテーマだったので、漫画もすぐに購入させて 頂きました。「第二の患者さん」は、病気の患者さんの御家族の …

男の介護と虐待

過去にこちらのブログで、『迫りくる「息子介護」の時代』 という本の紹介をさせて頂いたことがあります。迫りくる「息子介護」の時代 28人の現場から (光文社新書)作者: 平山亮,解説上野千鶴子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2014/02/18メディア: 新書この…

「異常者」と殺意を生む職場

大口病院の事件は衝撃的な内容でした。 「信じられない」「許せない」という多くの声の中で、 一部の医療者・介護者はTwitter等で高齢者医療・延命治療 のあり方、医療・介護者の置かれている過酷な環境などを 発信していました。しかし、これに対しては、「…

同居孤独死

Yahooニュースにこんな記事がありました。headlines.yahoo.co.jp家族と同居をしているのに孤立状態で異常死を遂げる ケースがあると記事は述べています。別の記事によると、 このような「同居孤独死」は都内で年間2000件ある そうです。ちなみに一人暮らしの…

『母親に、死んで欲しい』

将来介護をする、受ける人になる可能性は、とても高いと 思います。特に家族に介護する/される人にとって、是非 一度は読み、考えて頂きたい本だと思います。「母親に、死んで欲しい」: 介護殺人・当事者たちの告白作者: NHKスペシャル取材班出版社/メーカー…

「一番苦しいのは本人」ですか?

がんの末期に限ったことではありませんが、介護している家族 に向かって「あなたも大変だと思うけれど、御本人の方が辛いの ですよ」等と声がかかることがあります。これは間違っていると 思います。もちろん、痛みや呼吸苦、嘔気などの身体的な苦痛を 感じ…

『1000の夜を駆ける: ーわたしは統合失調症』

本日は本の紹介です。統合失調症を発症された著者 『しらたま』さんが、これまでの経験や想いを綴った漫画です。 これは2012年に描かれた作品ですが、AmazonのKindle Unlimitedに 登場したのを発見し読ませて頂きました。1000の夜を駆ける: ーわたしは統…

介護職員への暴力を黙認すべきではない

高齢者や認知症の患者さんは、心身ともに衰えた「弱者」 であり、その人権が侵され易いため、これを守ることが 大切であるとしばしば指摘されます。これはその通りです。しかし同時に介護・支援する側の家族や介護職員・看護師の 人権を尊重すべきだ、という…

『痛い在宅医』

2017年12月に出た、長尾和宏先生の著書。 在宅療養を、特に看取りを考えている御家族に必須の本 ではないかと思います。痛い在宅医作者: 長尾和宏出版社/メーカー: ブックマン社発売日: 2017/12/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見…

「身体拘束ゼロ」が生む悲劇

一昨日、Twitterで想いのほどを散々呟かせて頂いたのですが…。 私はもともと、「身体拘束を出来る限り減らす」は大賛成ですが 「ゼロ」という考えにはかなり抵抗があります。 そういった考えは過去にも、kotaro-kanwa.hateblo.jpまた、kotaro-kanwa.hateblo.…

『身体拘束』を本当に減らすために必要なこと

2018年1月11日放送のクローズアップ現代で、『身体拘束』の特集 がありました。見逃してしまった方は、サイトで内容を閲覧する ことが出来ます。www.nhk.or.jp拘束の存在もあまり知らない一般の方々への問題提起という 意味では大変意義のある内容でしたが、…

平穏死ー患者は本当に苦しんでいないのか

長尾和宏先生のブログにこんな記事がありました。blog.drnagao.com長尾先生は在宅医療の一線で活躍されている先生です。 たくさんの本を書かれ、あちこちで講演を行うなど 在宅医療普及に向けた活動も精力的に行っておられます。 胃瘻の本などはとても良く書…

『ニルスの国の認知症ケア』

ニルスの国の認知症ケア―医療から暮らしに転換したスウェーデン作者: 藤原瑠美出版社/メーカー: ドメス出版発売日: 2013/08メディア: 単行本この商品を含むブログを見るはじめにお断りしておきますが、2013年出版の本です。 内容に感銘を受けたので紹介させ…

延命治療を強いるのは50代息子が多い

diamond.jp看取りの場で、「救急車を呼べ!生き返らせろ!」と叫ぶ息子。 そんな場面からこの記事は始まります。80代、末期がんの親。 望まない経鼻栄養を強いただけでもどうかと思うところです。 傾向としては、お嫁さん任せで、なかなか介護にコミット し…

高齢者の誤嚥と訴訟を考える(2)

前回の更新からだいぶ時間が空いてしまいました。 今日は前回に引き続き、高齢者の誤嚥の問題を考えたいと 思います。さて、まず医療者、介護者にはだいたい常識的にお分かり だと思いますが、『要介護者』に当たる高齢の方々は、 どんな原因で亡くなってい…

高齢者の誤嚥と訴訟を考える(1)

7月に埼玉県の特養に入所中の86歳の女性が食事中に誤嚥し亡くなり、 「母親が亡くなったのは施設の介護ミスが原因」として40代、50代 の息子さん二人が提訴したという記事が出ていました。www.bengo4.comこの記事によると非常に短い時間で食事を詰め込んだ事…

末期がん患者さんの吐下血

報告によりまちまちではありますが、末期がんの患者さんの 1~5%に顕著な吐下血が起こると言われています。特に吐血 は御本人にとっても死を強く連想する恐ろしい出来事だと 思います。この場合医療者は、家族はどのような対処をすべき でしょうか。まず、…

認知症~安全よりも大切なもの

2015年に、関西のカジノやパチンコ、マージャンなど 娯楽設備を備えた介護施設について、行政はパチンコ やカジノを主なリハビリ手段として使用すること、施設内 で流通する疑似通貨の使用を禁止する条例を制定しました。 理由は、高齢者がギャンブル依存症…

認知症患者さんと三八式歩兵銃

数日前、Twitterでこんな写真入りのツイートを見ました。介護施設で、認知症の患者さんに旧日本軍が使用していた 三八式歩兵銃のモデルガンを渡したところ、今まで座って ばかりだった人が立ち上がって歩き出した、という記事 でした。昔の戦争の記憶が脳を…

認知症~家族介護の難しさ

私は今グループホームや老人ホームへの訪問診療は 行っておらず、訪問しているのは全て患者さんの自宅 です。独居の方も多いですが、大半は御家族が同居し 介護されています。つくづく思うのは家族介護は家族ならではの難しさを 持っており、しばしば非常に…

BPSDに対する抗精神病薬の使用と中止(3)

今回は、BPSDに使用した抗精神病薬の減量と中止について の話をしたいと思います。こちらのメタアナリシスを参考 にさせて頂きます。www.ncbi.nlm.nih.gov上記はシステマティックレビューを含む9つの研究を分析 しています。どれもRCTであり、プラセボとの比…

BPSDに対する抗精神病薬の使用と中止(2)

本日は抗精神病薬の中止に関する話題にする予定でしたが、 その前に薬の効果判定についてもお話したいと思います。 治療の目的を考えると介護者の主観で「効いた」とか 「効かなかった」でも良いと思うのですが、ある薬剤が 患者さんの症状のどの部分に効い…

BPSDに対する抗精神病薬の使用と中止(1)

認知症患者さんの暴言・暴力・介護抵抗・徘徊等周辺症状 と言いますが、周辺症状をBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの頭文字をとってBPSDと呼びます。 介護する側にとってしばしば大きな悩みをもたらし、 介護の継続が困難となる主たる原…

胃瘻を作らないことは「弱者の切り捨て」か

昨日Twitterでこんな記事を見掛けました。headlines.yahoo.co.jp京都市で、市民が自分の終末期に備え、胃瘻や 人工呼吸器等の治療に対して、また療養の場所 などを予め書いておく事の出来る「事前指示書」 が配布され、物議を醸しているというニュース です…