Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

ホスピス

患者さんの「死にたい」という言葉

今日は、こまち先生のブログを読んで考えたことを書きます。ameblo.jpまずブログがとても良いので是非お読みください。私は訪問診療を行っていますので、がんの終末期の患者さん や、介護を受けている高齢者の患者さんと出会い、話をする ことが多いのですが…

「緩和ケア」の名称をもう一度考える

Twitterで話題になったので、もう一度「緩和ケア」という 言葉について思っていることをまとめてみたいと思います。何度もお話している通り、本来「緩和ケア」には「終末期」 という意味は全くありません。患者さんの困りごとを助ける、 様々な医療やケアの…

「何処で亡くなるか」より大事なこと

最終的に自宅で亡くなった患者さんの家族から、 「最後まで家にいさせてあげられて良かったです」 という言葉を頂くことが多いです。 「そうですね」と答えると同時に、在宅医として お役に立てたと嬉しく思う瞬間でもあります。しかし、自宅でなく病院で亡…

安心して死にたいと言える場所

だから、もう眠らせてほしい 安楽死と緩和ケアを巡る、私たちの物語作者:智弘, 西発売日: 2020/07/14メディア: 単行本『だから、もう眠らせてほしい』 以前私が紹介した西 智弘先生のこの本。 安楽死について緩和ケア医としての考えや葛藤をまとめた 素晴ら…

『死亡直前と看取りのエビデンス』

今日は久し振りの本の紹介です。全く新刊ではないです。 過去にTwitterでも紹介したように記憶しています。 既に読まれたという方も多いかもしれませんが、まだ の方は是非お勧めしたい本になります。死亡直前と看取りのエビデンス作者:森田 達也発売日: 201…

酸素投与は緩和ケアにつながるか

medical.nikkeibp.co.jp本日17日の、日経メディカルの記事です。何か新しい知見でも あるのかと期待してしまいましたが、特に目新しい内容では ありませんでした。上記は会員登録しないと見れませんし、 私の以前書いた記事が我ながらよくまとまっていますの…

「カウンセリング」から学ぶこと

私は今、カウンセリングの資格を勉強していますが、 医療とカウンセリング、どちらも「問題の解決」を 目的としながら、考え方が大きく異なることは興味 深いと思います。医療は、具体的な問題の解決策を医師が考えて提案 します。より専門的な知識が必要で…

「レスキュー」の適正使用について

ある患者さんの、レスキューで使うオキノームの 使用状況が不適切だったので確認したところ、 誰がどこで説明したのか分からないのですが、 御家族は5分経ったら再度使用して良い、と理解 されていたことが分かりました。オキノームはオピオイドを使用してい…

病気と居場所

前回、野田あすかさんの本から居場所について思ったことを 書いてみました。居場所とは、気持ちの通じる相手がいて、 「このままで、居てもいい」と思える場、そこにいれば 「頑張れる場」のことだと私は思っています。今日はこの 「居場所」を医療の側面か…

緩和ケアの本質は耳を傾けること

私は痛いこと、苦しいことが苦手な人間なので、患者さん の苦痛を減らす仕事がしたいと緩和ケアを学びました。 痛み止めの使い方を覚え、セデーションの方法を学び、 ある程度自信を持つまでにはそれ程長い時間はかかり ませんでした。しかし、そんな頃イン…

鎮静で苦痛はとれているのか

終末期に鎮静を行っていても患者さんは苦しそうだという話 を聞くことがあります。痛い、つらいのに声が出せない、と いった御自身の経験などから「苦しいのに声をあげられない のでは…」と心配する声も聞きます。基本的には、鎮静を開始するよりは楽になっ…

鎮静が必要なのは医師の技術が劣っているからか

興味深いタイトルの記事があるな、と思っていたら、大津 秀一先生 のブログでした。news.yahoo.co.jp色々な緩和ケア医がいますが、大津先生は最も勉強家で、何より とてもバランスのとれた先生の一人だと思います。おこがましい ですがとても私に近いお考え…

緩和ケア医の燃え尽き

6月24日の、日経メディカルの記事から。medical.nikkeibp.co.jp緩和ケアに携わる若手医師の69%に燃え尽き、30%に心理的 苦痛、というタイトルです。今回の、第24回日本緩和医療学会 学術大会でも発表された内容でした。緩和ケア医療に携わる 229人にMBI(M…

ホスピスはもう、「終の棲家」ではありません

少し前になりますが、私が問題に感じていたことを西智弘先生が記事 にして下さいました。皆さんの理解とは別に、ホスピスは徐々に 「最期まで過ごす場所」ではなくなって来ています。背景には診療 報酬の変更が大きく関係しています。記事の中でとても詳しく…

beingが苦痛な時は

新城拓也先生のブログ記事から。drpolan.cocolog-nifty.com新城先生は不器用なほどストイックで真面目に緩和ケア に向き合っている先生、と私は勝手に思っています。お会い したことがないので、あくまでブログの記事などからの想像 ですが。私も同じ道を歩…

「緩和ケア」が敬遠される理由

当該記事のコメントを見ると「緩和ケアを選ばなくてよかった って言える人生を過ごしてほしい」「緩和ケアは本当に必要 最低限な処置しかしません。治療や心電図をつけたりは一切 しません。家族にとっても本当につらい病棟です」 等とあり、悲しい(個人の…

医師の信念と患者の気持ち

とても興味深い対談が連載中です。www.kango-roo.com少し前に御紹介した幡野広志さん(2017年に多発性骨髄腫を 発症。余命宣告を受けているフリーカメラマン)と、市立 井田病院の西先生の対談です。いきなり最初から幡野さんの するどい直球で始まります。 …

医療者が死にゆく時

長年大病院で勤務したある看護師さんが退職後 に末期がんを告げられ、いよいよ病状が悪く なった時、自分とはふた回りくらい違う歳の 看護師の前で涙をみせられたそうです。「自分が思い描いていた最期とは違った、 こんなに辛いものだとは思わなかった」こ…

「一番苦しいのは本人」ですか?

がんの末期に限ったことではありませんが、介護している家族 に向かって「あなたも大変だと思うけれど、御本人の方が辛いの ですよ」等と声がかかることがあります。これは間違っていると 思います。もちろん、痛みや呼吸苦、嘔気などの身体的な苦痛を 感じ…

「死の受容」に対する疑問(2)

昨日の続きになります。kotaro-kanwa.hateblo.jp昨日のブログでは、西先生のブログ記事、「患者さんは死を 受け入れられるのかどうか」を紹介させて頂きました。 そして我が国のホスピスがキュブラー・ロスの影響を強く 受け、まるで「死の受容」に至ること…

「死の受容」に対する疑問(1)

3月28日、川崎市立井田病院の西先生がこんなブログを書いて おられました。https://www.buzzfeed.com/jp/tomohironishi/shihaukeirerarerunoka?utm_term=.yxG1bjPa#.end58z4Zwww.buzzfeed.comTwitterでも散々絶賛したのですが、私がこの仕事をしながら 長年…

ホスピス医を目指す私が言われた言葉

医師になる前から緩和ケアに興味があった私は、がんという 病気を学ぶために消化器内科が良いと考え入局しました。 消化器は、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、 胆嚢・胆管がんなど悪性疾患の患者さんが多いのが理由です。 しかし、医局の…

「緩和ケアも治療です」

今日はこの記事に沿ってお話させて頂こうと思います。ex.yahoo.co.jpこの、背を向けた医師と右側から伸びるたくさんの手、 とても印象的な、象徴的なイラストですね。進行再発がんで化学療法を行っても、殆どの場合がんを完全に 治癒させることは出来ません…

痛み治療の先にあるもの

永寿総合病院で病棟・在宅の緩和ケア治療で活躍されている 廣橋猛先生の書かれた記事を御紹介します。http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/hirohashi/201711/553443.html (前略) 切除不能な胃癌を患い、現在は化学療法中です。食べると胃が…

『がんと命の道しるべ』

がんと命の道しるべ 余命宣告の向こう側作者: 新城拓也出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2017/07/24メディア: 単行本この商品を含むブログを見る素晴らしい本です。多くの患者さんとその御家族、そして さまざまな場所で緩和ケアに従事しているスタッフ、…

悔しい想い

今日のyomiDr.にこんな記事がありました。yomidr.yomiuri.co.jp 義父は 膵臓すいぞう がんと診断された。開腹手術― 抗がん剤治療―入院。徐々に悪化し、翌年5月、家族は 医師に呼ばれて「これ以上治療できない。緩和ケア病院 に移ってほしい」と告げられた。…

がん治療中止における家族間の葛藤

今日はこの記事について考えてみました。kenko100.jpまず、本文の主旨とは違いますが、「緩和ケアを受ける」 という言葉が、(がん治療を中止し、)緩和ケア病棟に 入院する、という意味合いで使われています。 このブログでも何度もお話している通り緩和ケ…

がんと闘う

『闘病』という言葉があります。 がんの場合狭義には手術・放射線療法・化学療法 (いわゆる三大治療)などがんの治癒や延命効果を 期待した積極的な治療を受けることを指す場合もあり ますが、もっと広い概念で『病と対峙し生きる』 ことを指すこともあるか…

末期がん患者さんの吐下血

報告によりまちまちではありますが、末期がんの患者さんの 1~5%に顕著な吐下血が起こると言われています。特に吐血 は御本人にとっても死を強く連想する恐ろしい出来事だと 思います。この場合医療者は、家族はどのような対処をすべき でしょうか。まず、…

目的と手段を入れ替えてはいけない

Twitterで見た、ある薬剤師さんのツイートを御紹介します。 在宅医療の主語は誰か? 他ならぬ患者さんである医療従事者が訪問するから在宅医療なのではなく、 患者さんが自宅で暮らしながら受ける医療が在宅医療なんだと思うだからこそ、訪問は手段なんだと…